金子クリニック 金子クリニック:耳鼻咽喉科
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耳鼻科にかかる前の、心の準備(子供、親)
1:病気が治るという事
まず理解して頂たい事は、基本的にどこの科の病気でもそうですが、人間の体には病気やケガを自分の体で治そうという自然治癒力があり、薬や治療行為は、それを最大限に引き出して、病気やケガの回復を手助けするにすぎないという事です。ですから、薬さえ飲んでいれば薬が治してくれるというのは、思い込みであると言わざるを得ません。特に、滲出性中耳炎ではいくら通っていてもなかなか良くならない時期があって、ある日突然快方に向かい治ってしまうことを、しばしば経験します。ある耳鼻科に通院して、2カ月、3カ月良くならなかったのが別の耳鼻科に変えたら、あっという間に治ってしまった。それは、耳鼻科を変えたから治ったのではなく、たまたまその時期が回復する時期だったに過ぎないのです。医師は病気を治す手助けしているのであって、病気は本人の自然治癒力が治しているのです。

2:病気を持つ親の悩み
私が考える限り、お母さん方のストレスの原因は2っの事によると思われます。
(1) 耳鼻科に繰り返しかかっているが、病気が良くなっていないようだ。あるいは、治らない。頑張って通院しているが時間の無駄ではないか?このまま、治らないんじゃないか?
(2) 子供が耳鼻科に行くのをいやがっているし、治療にうまく協力できない。子供は、泣きわめいて子供にとってもストレスだし、このまま通っていても、親も子も精神的な負担が大きすぎる。子供の病気をもっと早く治してくれる良い耳鼻科があるんじゃないだろうか?
これらの疑問や不安にかられている方は多いんではないでしょうか。
 病気はひとりひとりの自然治癒力によって治りやすさが違うのです。ですからまず自分の通っている耳鼻科医を信頼することが、まず始めの一歩ではないかと思います。特に滲出性中耳炎は長引いたり、再発を繰り返す事が多く、2〜3カ月治らないことも珍しくありません。また小学校2〜3年生位の年齢まで再発を繰り返すことが多いです。時期が来ればほとんどの子供は完治する病気ですから、治らないからといって落ち込まずにじっくり治療に取り組んでください。

3:どのような気持であるいは心構えで長く耳鼻科に通院する時期を乗り越えればよいでしょうか?
子供はみんな病院は嫌いです。それは、いろんな器械や器具で鼻や耳やのどを見られたり、押さえられたり吸引されたりするからです。時には、注射されたり切開されたりしますので、子供にとってこんなに恐怖の場所はないでしょう。でも、そういう治療を受けることは病気を治す為に、必要なことです。生きていく上で、嫌なことや、やりたくないこと、苦痛なことでもそれを我慢して、恐怖を克服して行なわなければいけない事があるという事を、子供に教えてあげ、身につけてあげる(躾)絶好の機会だと考えてみたらいかがでしょうか。長い期間の耳鼻科通院を、無駄な時間と考えず、子供のしつけ、成長の場として考えて見る事で、じっくりと親子で病気の治療に取り組んだらいかがでしょうか。
 実際に、耳鼻科に通院している親子で、耳鼻科の通院治療をとおして、子供が恐怖を克服し、いやなことでも我慢してやるという事を身につけていった子供を何人も経験しています。そういった、子供の成長を目のあたりにした時、私は病気が治った事以上に、子供をもつ同じ親として感動し喜びを感じます。

4: 子どもへの関わり方
やはり母親の子供への協力や、うまい働きかけがなくてはならないものです。子供の不安や恐怖を和らげる事や、治療や通院の必要性を子供の言葉で繰り返し話してあげる事が大切になってくると思います。痛みをともなう処置をする時には、あらかじめ『少し痛いけど、がんばろう!』とか子供に話すようにしています。もし、『痛くないから大丈夫だよ!』といって鼓膜切開をしたら、その子は二度と鼓膜切開を受けなくなるでしょうし、お医者さんを信用しなくなるでしょう。それは、その後の治療に支障をきたす事にもなります。子供だからといって、絶対にウソをついてだましてはいけません。私は、鼓膜切開を子供に説明するときは、『耳のなかのバイキンマンを外に出して、やっつけよう!』などと話します。けっして、『耳の奥の鼓膜を切ってバイキンをだそう!』とは言いません。耳を切るなんて事は、子供には恐ろしくて、とても受け入れられないと思うからです。いたずらに、子供の恐怖心をあおるような言動は使わないようにしましょう。
しかし、こうして恐怖や不安を克服した子供たちの、母親をみると子供と一緒に成長したように見えます。はじめは、ただただ可愛い、痛そうな治療は”かわいそう”という子供に対しての接し方が、通院しているうちに時には、毅然とした態度と頑張った子供に対しての慰めや暖かい愛情にあふれた態度をとれるようになり、母親の子供に対する接し方が変化します。子供は、そんな母親との耳鼻科での経験を通して、我慢する心、恐怖に立ち向かう勇気、病気に勝ったことでの自信が得られ、母親や医師との信頼感も生まれ、その後の人格形成にも、少なからず良い影響があると思われます。
お子さんの耳鼻科通いを苦痛やストレスと感じずに、子供の成長やしつけや教育の絶好のチャンスととらえ、子供と一緒になって病気を克服し、子供とともに成長をしていけたら良いのではないかと思います。
毎日の診療を通して、思っていること、感じていることを書いてみました。少しでも、お役に立てることがありましたらうれしいです!
(院長 金子)
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